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ファスナーの歴史とブランド

衣服やカバンなど、様々なものに使われる「ファスナー」。
実は、国や地域によって「ジッパー」、「スライドジップ」、「チャック」 など色々な呼び方をされていますが、 「ファスナー」もしくは「スライドファスナー」というのが正式名称です。

ファスナーそのものの誕生は、1891年に米国ホイットコム・ジャドソンによって、 靴ヒモを結ぶ不便さを解決しようと考えられたものが、 ファスナーの起源とされています。

これは今の一般的なファスナーと違い、アクセサリーのようなものでした。
ジャドソンは、この発明品をシカゴで開催された世界博「コロンビア博覧会」に出品し、 これに当時弁護士であったルイス・ウォーカーが着目して、 のちに「ユニバーサル・ファスナー会社」を設立し製造したものが、 工業製品としてのファスナーの始まりとされています。

「ジッパー」という呼び名は、1921年に米国のゴッドリッチ社が、 閉める時の「シューッ」という擬音の「Zip」からファスナーを「ジッパー」と命名し、 その呼び名が浸透しました。
「チャック」という呼び名は、1927年に日本の尾道(おのみち)で、 日本初の国産ファスナーが生産され、「巾着」からもじって「チャック印」と命名され、 それが評判となり、「チャック」という名が定着しました。
ですから「チャック」は純粋な日本語なのです。

そしてファスナーの知名度を劇的にアップさせたのが、 1920年代半ばの、ジーンズへの採用でした。
Lee社製101Zという初のジッパーフライジーンズに採用された、 TALON(タロン)社製「42オートマチック」というファスナーです。
このタロン「42オートマチック」は、歴史に残る逸品中の逸品といわれています。
閉じたときの幅が42ミリだったことと、スライダー部分にスプリングが内蔵されており、 自動ストッパー機能を搭載した優れもので、それ故にオートマチックと呼ばれています。
この名品も1992年に生産が中止となり、タロンのブランドそのものが、 経営上の理由で他社に吸収され、 昔ながらのタロンジップを目にすることはできなくなりました。

そのタロンと日本のYKKはファスナーを語る上で欠かせない会社です。
タロンはファスナーの本家、元祖的な存在で、 基本設計やロック機構などを30年代にはほぼ完成させていました。
他のメーカーは、タロンの品質を目標にもの作りに励んでいたといわれています。
特に品質の高さは他社と比較しても抜きん出ており、 1920年代の初期にアメリカ軍へ納入を果たし、 厳格さで知られている「ミルスペック」を獲得しています。

「ミルスペック」というのは「Military Specification」のことで、 直訳すると「米軍仕様書」で、あらゆるものに対して設定される規格のこと。
材質、形状、サイズ、製法に至るまで厳格に定められており、 規定をクリアしないと納入できないのです。

一方、YKKは1934年に創業者・吉田忠雄が、東京・東日本橋にサンエス商会を設立し、 ファスナーの加工・販売を開始したのが始まりです。
当時は務歯(ムシ)というファスナーのかみ合う部分を手作業で生産していたので、 量産ができず、品質も不安定で、故障の苦情が多かったようです。
カバンの生産地として有名な兵庫県の豊岡には、 多くのファスナーを購入してもらえる上得意の企業がありました。
ファスナーへの苦情はそのままカバンに対するクレームとなり、 生産地が困っているという話を聞き、創業者自ら、 できたばかりのファスナーをリュックにいっぱい詰めておもむき、 名誉回復をはかったというエピソードが残っています。

1945年には吉田工業株式会社に社名を変更し、翌年「YKK」を商標としました。
そして1955年、富山県の黒部工場が稼働して、ファスナーに使う金属の鋳造、 テープ部分の糸を紡ぐ紡績設備まで備えて、一貫生産が可能になってからは、 品質が飛躍的に向上、やがてライバルのタロン社を質量ともに追い抜いてしまいます。
世界各地に工場を持ち、世界シェアの約45%をも占め、 建材部門でも業績を上げています。
創業者の吉田忠雄は少年期に、アメリカのUSスティールの創業者、 アンドリュー・カーネギーの「他人の利益をはからずして、自らの繁栄はありえない」 という言葉に深く感銘を受け、 それはやがて「善の巡環」という彼のもの作りに対する基本精神へと熟成され、 今なおYKKの企業理念として受け継がれています。

その他有名なファスナーメーカーには以下のようなものがあります。

・SCOVILL(スコービル)社
ジーンズのボタンやリベットの製造で有名なスコービルは、 ジーンズ業者にそれらを納入していた関係でジッパー業界にも進出。
当初は、タロン社に外注し、それにスコービルの名前を入れて納入していました。

・CONMER(コンマー)社
30年代後半よりA-2などフライトジャケットに多く採用され、 50から60年代頃には約70%ものシェアを誇っていたようです。

・CROWN(クラウン)社
ミリタリージャケットによく使われ、ダイキャストと呼ばれる特殊な製法、 ハイヒール型の美しい設計、そして独自のスプリングロック機構など、 ジッパーを工芸品とした理念からの構造で有名です。

・GRIPPER(グリッパー)社
Leeの101Zや、LEVI 'Sの501ZXXなどの初期ジッパージーンズによく見られるグリッパーは、 スコービル社の1ブランドで、ヴィンテージジーンズのディテールの一つにもなっています。

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